プロジェクトストーリーWheeliy

Wheeliy

車椅子市場への挑戦
モルテンの技術を結集し
「クルマイス」をつくる

Wheeliyは2019年に発売が開始された車椅子。開発には4年の年月を経たプロジェクトです。
車椅子の市場は昔からあるけれど、プロダクト自体はあまり進化しているように見えない。利用者もたくさんいるはずなのに、案外街中で見かけることは多くない。モルテンで、新しい車椅子の開発ができないだろうかという問いからWheeliy開発が始まりました。

Wheeliy
Wheeliy
Wheeliy

「Wheeliy(ウィーリィ)」はこれまでの車椅子の枠を越え、昨日よりも少しだけ違う自分に出会ってみたくなるクルマイスを目指しています。オーダーモデル、スタンダードモデル、電動アシスト付きのモデルを展開しています。

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プロジェクトストーリースポーツ用品 × 自動車部品 × 医療・福祉機器 の技術を結集し「クルマイス」をつくる

大野 博OHNO HIROSHI

医療・福祉機器事業 製品開発統括部責任者

1989年
モルテン入社、開発センターに所属、浮桟橋“マリンクス”の開発に携わる。
1995年
マリン用品の設計・開発に携わる。
2008年
モルテンメディカル工場長に。
2012年
医療・福祉機器事業の設計・開発を担当。

ストーリーのアウトライン

モルテンは4つの事業があり、スポーツ用品、自動車部品、医療・福祉機器、マリン・産業用品、それぞれの事業に技術や経営資源があり、お互いに学んで活かして行こうという活動“Crossover(クロスオーバー)”を数年前から進めていました。

戦略研修のテーマの一つとして、車椅子を取り上げて市場調査をしてみると、下肢障害のある方は180万人くらいのはずなのに、そのうち車椅子の利用者は20~25万人くらい。これは利用者の車椅子に対する不満の結果ではないかと考えました。車椅子を使えばもっと行動範囲を広げられる、外に出られる方も多いはず。我々のディビジョンブランドである“From the Inside Out”の実現につながるテーマだと思いました。

そして、改めて考えてみると、車椅子は随分昔からあるけど、あまり進化しているように見えない。利用者の方もたくさんいるはずなのに、案外街中で見かけない。我々の力で、新しいものができないだろうか、というのがスタートです。

エピソード 01

車椅子ではなく、「クルマイス」を目指して

着想から2年ほどで製品化のメドをつけ、実際の市場導入に向けて検討する段階で外部の会社と組んで、コンセプトやデザインを練っていきました。
車椅子というと、足の不自由な人が乗る特別なものというイメージがあります。しかし目の悪い人は普通に眼鏡をかけますが、これを特別だと思う人はいませんよね。メガネというファッションの一つにもなっています。我々が目指したのはまさにそれで、車椅子ではなくクルマイス。「いいね、それ」と言ってもらえて、当たり前の日常の風景になるようなものにしたかった。だから、Wheeliy(ウィーリィ)というネーミングにもこだわりました。車輪を示すWheelに、英語の愛称によくあるiyをつけて、「クルマイス」らしさを親しみやすく表現しています。また、iyには「私とあなた」という意味もあって、クルマイスに関わるのは第三者ではない、私とあなたなんですよ、と。例えば、Wheeliyの黄色い部分があるでしょ。これは、ここを持ってください、ここで畳んでくださいということを言わなくてもわかるようにしています。

エピソード 02

製品 • 流通 • 市場でニーズを把握

まず、モルテンがクルマイスをつくっているということを知ってもらう必要があります。幸い、マットレス等の他の製品で病院や介護施設と取引実績があります。病院などでクルマイスを使っていただければ、個人の購入につながるのではないかと考えました。そこで、病院施設専用のWheeliyメディカルを開発して、最初に病院や施設から市場導入を始めました。それから半年後に、個人向けのWheeliyパーソナルの発売を開始しました。

想定していなかった課題が見つかり改良を繰り返す

実際に病院施設で使っていただくと、想定していなかった課題が出てきました。当初1機種のみで市場導入したものの、現場からは「もっと背もたれの高いものを」、「フットサポートを取り外したい」といった声が出てきました。急遽、製品の機種を増やしたのですが、個人利用の際にもこうした要望が出てくるだろうと、製品改良につながる部分がありました。

ブランドステートメントを追究し続ける

“From the Inside Out”のディビジョンブランドを体現した商品にするには、より快適に、気軽に、遠くまで出かけていけるようにしたい。そこで、Wheeliyパーソナルでは、パワークッションやパワードライブを導入しています。パワークッションは、我々の褥瘡じょくそう予防の知見を活かした優れもの。長時間座っていても、おしりの痛みや床ずれの心配が少ない。クルマイスにピッタリ合うのはもちろん、列車や飛行機に乗る際に、シートの上に置くこともできるので、移動中も快適に座ることができます。パワードライブは、フル電動ではなく、坂道など必要なタイミングで使えるようにして、それ以外はできるだけ自走を優先する考え方をとっています。その人の体の能力を極力生かそうということですね。
Wheeliyメディカルでは、看護介護現場で課題となっている移乗に関して、クッションとトランスファーボードをセットにして、安全かつ簡単な移乗の実現を提案し、徐々に広がり始めています。

エピソード 03

エンジニアとして、未だないものをつくりたい

集大成のような製品となったWheeliy

大学では化学を学んで、前職では超吸水性のポリマーの開発や高分子合成などをやっていました。モルテンに入ってから、マリン・産業用品を手掛ける部門に配属され、浮桟橋などを開発しました。その後、モルテンメディカルの工場長に就任し、いつの間にか医療・福祉機器事業に携わることになりました。エアマットレスをはじめ、いろんな製品開発に携わりましたが、このクルマイスの開発は、私にとってエンジニアとしての集大成になりました。

社内メンバーと外部メンバーの共同チームだから、達成できた

当然のことですが、クルマイスの開発、製品化は私一人でやったわけではありません。営業、開発、品質保証、経営企画といった社内はもちろん、デザインは外部に依頼するなど、多くのメンバーが関わっています。彼らの頑張りなしには、Wheeliyができることはありませんでした。特に意識したのが経営資源をどう調達するかということです。モルテンの中だけでなく、モルテンが持っていないものは積極的に外に求めていこう、外と組めばいいのではないかと。デザインは外部委託ですし、クルマイスのユーザーの方ともコンタクトを持ち、使う側の生の声を聞きました。正直、耳の痛い意見やお叱りをたくさん頂きました。「クルマイスに対する不満を解消する」という、社会課題に取り組んでいるわけですが、頭ではわかっているつもりでも、実現できていないことは山ほどあるのだと気づかされました。

改めて、モノづくりやエンジニアに必要なのは「感性」

Wheeliyの開発、製品化にあたって、私がリーダーを務めてきましたが、私は自分自身を一人のエンジニアだと考えています。改めて思うのは、モノづくりやエンジニアに必要なのは「感性」だということ。そのためには会社の中だけにいてはダメで、どんどん外に出てユーザーさんたちの中に入っていかないといけない。そして、メンバーと議論を繰り返し、多くの人を巻き込む。その結果、利用される人たちにとって良い製品が出来上がる。これがエンジニアとしての仕事の面白さだと思います。

優れたデザイン性が評価されました

2021年 11月 ヨーロッパ最大規模の近代美術館、ピナコテーク・デア・モデルネに収蔵
2020年 10月 2020年度グッドデザイン賞受賞
2020年 3月 レッド・ドット・デザイン賞(プロダクトデザイン2020部門)受賞
2020年 2月 iFデザインアワード2020受賞
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