医療・福祉機器事業
製品開発統括部所属
1989年入社

経歴

  • 1989年にモルテン入社、開発センターに所属、浮桟橋”マリンクス”の開発に携わる。
  • 1995年 親水機材の設計・開発に携わる。
  • 2008年 関連会社工場長を経て、2012年より、医療・福祉機器事業の設計・開発を担当。
  • 現在、医療機器・介護用品・福祉用具の製品開発統括部の責任者を務める。

Wheeliy(ウィーリィ)とは

「Wheeliy(ウィーリィ)」はこれまで車椅子の枠を超え、生活を変えてみたくなるクルマイスを目指してます。
昨日よりも少しだけ遠くに行ってみたくなる。昨日よりも少しだけ違う自分に出会ってみたくなる。
ブランドステートメント「From the Inside Out」の世界観そのものです。
企画から開発を進めてきた開発責任者に新製品に対する思いを語ってもらいました。

プロジェクトの始まり

世の中にないクルマイスを作りたい

車椅子をやろうというきっかけは、エンジニアとして、これまでにない何か新しいものをやりたいという気持ちが強くあったからです。モルテンって変わった会社で、スポーツあり、自動車部品あり、医療・福祉機器ありで、それぞれの良い所がある。その良い所をお互いに学んで生かして行こうという活動Crossoverを数年前から進めていました。また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、モルテンが注目したのは、やはりバスケ、それも車いすバスケでした。「スポーツ」、「車」、「医療・福祉」の3つが重なるところ。車椅子こそ、Crossoverじゃないか…という感じだったんですね、最初は。で、改めて考えてみると、車椅子は随分昔からあるけど、あまり進化しているように見えない。利用者の方もたくさんいるはずなのに、案外街中で見かけない。我々の力で、新しいものができないだろうか、というのがスタートです。

とは言え、車椅子のノウハウは社内にもないし、車椅子市場はすでに大手各社が押さえていて、今からモルテンが入って成功できるのかという思いもありました。戦略研修のテーマの一つとして取り上げて進めてみたものの「本当にやるの?」と及び腰で(笑)。でも、民秋社長からも「絶対にやろう!世の中をより良い場所にできる」と色んな提案やアドバイス、そして激励をもらって。市場調査をしてみると、下肢障害のある方は180万人くらいおられるはずなのに、そのうち車椅子の利用者は20~25万人くらい。これは利用者の車椅子に対する不満の結果ではないかと考えました。車椅子を使えばもっと行動範囲を広げられる、外に出られる方も多いはずで、我々のブランドステートメントである「From the Inside Out」の実現につながる話です。

2年近くかけて車椅子の製品化のメドをつけ、実際の市場導入に向けてはもう少し検討が必要だったので、外部業者と組んで、コンセプトやデザインを練っていきました。車椅子と言うと、足の不自由な人が乗る特別なものというイメージはないですか。でも目の悪い人は普通に眼鏡をかけるし、これを特別だと思う人はいませんよね。メガネというファッションの一つにもなっています。我々が目指したのはまさにそれで、車椅子ではなくクルマイス。「いいね、それ」と言ってもらえて、当たり前の日常の風景になるようなものにしたかった。だから、Wheeliy(ウィーリィ)というネーミングにもこだわりました。車輪を示すWheelに、英語の愛称によくあるiyをつけて、「クルマイス」らしさを親しみやすく表現しています。また、iyには「私とあなた」という意味もあって、クルマイスに関わるのは第三者ではない、私とあなたなんですよ、と。例えば、Wheeliyの黄色い部分があるでしょ。これは、ここを持ってください、ここで畳んでくださいというのを、いちいち言わなくてもパッと見てわかるようにしてあるんです。
当初は個人購入をターゲットに市場導入を考えていたのですが、途中で「本当に大丈夫か?」という疑問が出てきました。先述した通り、車椅子市場にはすでに既存製品があり、モルテンは無名。

デザインがいいから、使い勝手がいいから、だけで使ってもらうにはいくらなんでも無理がある。まずモルテンがクルマイスをやっているんだということを知ってもらわないと話になりません。幸いというか、モルテンにはマットレス等の他の製品で病院や介護施設と取引実績があります。病院などでクルマイスを使って頂ければ、個人の購入につながるのではないかと考えました。そこで、病院施設専用のWheeliyメディカルを開発して、最初に病院や施設から市場導入を始めました。個人向けのWheeliyパーソナルは、それから半年後に発売を開始しました。結果的に、これが良かったのではないかと思います。実際に病院施設で使って頂くと、想定していなかった課題が出てきました。当初1機種のみで市場導入したものの、現場からは「もっと背もたれの高いものを」、「フットサポートを取り外したい」といった声が出てきました。急遽製品の機種を増やしたのですが、個人利用の際にもこうした要望が出てくるだろうと、製品改良につながる部分がありました。

この開発は、技術者としての集大成

あとは、やっぱりモルテンらしさを出したいという意見も出てきて、From the Inside Outと言う以上は、より快適に、気軽に、遠くまで出かけていけるようにしたい。Wheeliyメディカルでは、看護介護現場で課題となっている移乗に関し、クッションとトランスファーボードをセットにして、安全かつ簡単な移乗の実現を提案し、徐々に広がり始めています。

Wheeliyパーソナルでは、試行錯誤しましたが、パワークッションであり、パワードライブを導入しています。パワークッションは、我々の褥瘡予防の知見を活かした優れもの。長時間座っていても、おしりの痛みや床ずれの心配は少ないです。クルマイスにピッタリ合うのはもちろん、列車や飛行機に乗る際に、シートの上に置くこともできるので、移動中も快適に座ることができます。パワードライブは、フル電動ではなく、坂道など必要なタイミングで使えるようにして、それ以外はできるだけ自走を優先する考え方をとっています。その人の体の能力を極力生かそうということですね。クルマイスが出来上がった時の感想ですか?よく聞かれるのですが、「ああ、できたなあ」くらいで。実際に街中でWheeliyを使っている方に出会った時に初めて感動するじゃないかと思います。

もともと私は中途でモルテンに入ってきました。昭和最後の日に入社したんですけどね(笑)。大学では化学を学んで、前職では超吸水性のポリマーの開発や高分子合成などをやっていました。モルテンに入ってから、今でいう親水用品を手掛ける部門に配属され、浮桟橋などを開発しました。その後、子会社のモルテンメディカルの工場長に就任し、いつの間にか医療・福祉機器事業に携わることになりました。エアマットレスをはじめ、いろんな製品開発に携わりました。このクルマイスの開発は、私にとってエンジニアとしての、集大成みたいなものになりました。おかげ様でWheeliyは、iFデザインアワード2020も受賞しました。当然のことですが、クルマイスの開発、製品化は私一人でやったわけではありません。営業、開発、品質保証、経営企画といった社内はもちろん、デザインは外部に依頼するなど、多くのメンバーが関わっています。彼らの頑張りなしには、Wheeliyができることはありませんでした。社長や事業本部長と話をして、特に意識したのが経営資源をどう調達するかということ。モルテンの中だけでなく、モルテンが持っていないものは積極的に外に求めていこう、外と組めばいいではないかと。上述の通り、デザインは外部委託ですし、クルマイスのユーザーの方ともコンタクトを持ち、使う側の生の声を聞いたり。正直、耳の痛い意見、お叱りをたくさん頂きました。「クルマイスに対する不満を解消する」という、大げさに言えば、社会課題に取り組んだわけですが、頭ではわかっているつもりでも、実現できていないことは山ほどあるのだと気づかされました。

Wheeliyの開発、製品化にあたって、私がリーダーを務めてきましたが、私は自分自身を一人のエンジニアだと考えています。改めて思うのは、モノ作りやエンジニアに必要なのは「感性」だということ。そのためには会社の中だけにいてはダメで、どんどん外に出てユーザーさんたちの中に入っていかないといけない。そして、メンバーと議論を繰り返し、多くの人を巻き込む。その結果、利用される人たちにとって良い製品が出来上がる。これがエンジニアとしての仕事の面白さだと思います。

Wheeliy(ウィーリィ) WEBサイト