競技用ボールだけでない。スポーツエクイップメントで、既定路線の突破ができた製品の開発。
スポーツ用品事業はブランドステートメント”feel the emotion”を掲げています。
「スポーツでしか感じられない本物の感情を引き出すために、これ以上ない最適なプロダクトやこれ以上ない最適な環境をつくり、スポーツがいつも人生のそばにある世界を実現する。」ことを目指しています。
様々な製品に関わるなかで、印象に残っている製品が2つあります。
1つ目は、TOKYO2020 で使用されたサッカー競技場のコーナーフラッグです。既存品がありましたが、特別な試合のために設けられたルールに対応するため、新規で製品を開発することとなりました。
コーナーフラッグとは、コーナーラインを示すものとしてコーナーキックをする場所に設置されます。プレイヤーからすると、コーナーフラッグは、実はなくても困らないものです。一方で観客からすると、どこまでがコートなのかを示す目印として使われています。
製品に求められることは、怪我を防止できる品質です。試合中に選手に当たることを想定し、且つ定められたルールのなかで設計し仕上げる必要がありました。 例えば、「選手の顔や体に直接当たらないような形状にする」「たとえ当たっても曲がらない」などです。
製品を仕上げる過程で、国立競技場の審判部の方やグランドキーパーの方にヒアリングをしました。自分たちが良いと思っていたものでも、利用者にとっては改善点があったりと、何度も試作を繰り返しました。
基本的な設計は私が対応し、必要な部品は社内の自動車部品事業の材料の専門家に協力を要請しました。今回は製品の一部にゴム素材を使うことになったため、金型成形や試作品作りをサポートしてもらいました。このように、事業部の垣根を超えて協力して進めることができたことは、貴重な機会となりました。
一生において、オリンピックに関わる経験は何度もないことでしょう。会社の歴史に爪あとを残すような製品に関わることができたことは、私にとって大きな財産となりました。
2つ目は、アウトドアタイマーです。ここ数年の気温の変化で、特に夏の野外で長時間熱を帯びると不具合が発生してしまうことがありました。以前の製品は、本体の色は黒がベースで熱を吸収しやすく電子部品に影響があることがわかり、逆転の発想でベース白、文字を黒にするというアイデアで開発が始まりました。
これまで本体を黒にしていたのは、既存のデジタルタイマーが黒を採用しており、ブランドのデザイン性の統一を重視したからです。その既成概念を取っ払い、本当に質の良いもの、そして必要とされる製品を作ろうとリニューアルをしました。
この製品は、学生時代に学んだ、電気分野の知識が生かされています。本体の色の変更にとどまらず、野外での文字の見やすさを狙ってフィルターを改善しました。電気関連の担当者として手掛けたと言える、印象に残っている製品です。